外国産クワガタの一部を特定外来生物に

ウシガエルの幼体。あまり見かけないのは成体が捕食してしまうからとの説もある。 雑記帳
ウシガエルの幼体。あまり見かけないのは成体が捕食してしまうからとの説もある。

制対象の少し前に書いていた記事だが、現代の昆虫飼育でこの話題は避けて通れないだろう。

今回の特定外来生物等の新規指定の(検討)対象は

これまでの発表である程度懸念されていたが・・・まずはマルバネ属からクワガタも対象になるようだ。ウチでもよく取り上げているアカボシゴマダラチョウも指定される。昆虫では計12種が追加指定されそうだ。パブリックコメントを経て7月頃に指定、9月より規制が開始※されることになっている。よほどのことがない限り「候補の指定解除」はないと思われる。

※特定外来生物に指定されました。公布:平成29年11月27日、施行:平成30年1月15日

「環境省:指定日別 特定外来生物一覧」(PDF68KB)

特定外来生物とは・・・私的見解

私の中で「特定外来生物」というのは「圧倒する生態で在来種の生態系を脅かす」あるいは「在来種との交雑の可能性があり在来種の存続を脅かす」というのが大きなものだ。他では「農業・漁業等の産業に被害を与えるもの」というのもある。正確な表記ではないかもしれないが、まあ、妥当性はあると思う。

圧倒する生態で在来種の生態系を脅かす特定外来生物

越冬後に活動を再開した アカボシゴマダラの幼虫。

越冬後に活動を再開したアカボシゴマダラの幼虫。

まず、よくやり玉にあがるブラックバスはもとよりアカミミガメ、ウシガエル、アメリカザリガニ等は、最早、手を打つというには「到底無理」のレベルにあるといえる。これらが在来種に与えている影響は確かに少なくない。ブラックバスは経済効果を理由に反対する声も多いが、あまりにも無秩序に放流されすぎている。

更に言うなら、「他の北米系魚類(ナマズやガー)」や一般に在来種扱いされている「コイ」もだ。特に「コイ」は人為的に放流されることも多く、親しみはあるが、生態系を破壊する威力は絶大だ。もっと規制すべき対象だと思う。

今回のアカボシゴマダラはゴマダラチョウとの競合が大きな要因となっている。確かにアカボシゴマダラの生態は圧倒的でウチの周りでゴマダラチョウを見かけることはなくなった。

在来種との交雑の可能性があり在来種の存続を脅かす特定外来生物

こちらで思い浮かぶのはオオクワガタやヒラタクワガタ等の近縁種との交雑等だ。オオクワガタとタイワンオオクワやホペイとの交雑種は在来種との識別は非常に難しそうだし、ヒラタクワガタ系のメスはただでさえ種類を特定するのが難しいものが多い。交雑する確率も高いそうなので、交雑後の累代が進むかどうかはさておき、やはり放虫は厳禁である。

今回のマルバネなんかはこちらの問題が大きいとされている。

人の都合によるところも大きい

もちろん人の都合によるところも大きい。農作物等に被害を与えるようなものは早々に指定され、駆除の対象になるだろうし、逆に有益なもの(例えば特定の害虫駆除)は多少の在来種との競合があっても対象から外れるだろう。

たとえばウシガエルだ。稲作農家にとってみれば「特に大きな害になること」もなく、アメリカザリガニや害虫を捕食してくれる有益な存在かもしれない。他の水生生物の大きな脅威にはなっても、である。こういう側面が「種の保存」を考えたときに手遅れの要因になっているとも言える。

また、今回のマルバネクワガタ系への指定は主たる生息地である「南西諸島」「奄美群島」の世界自然遺産登録へ向けた動きの一つでもあるようだ。これも政治・経済色の濃い要因ともいえるが、指定に与える影響は少なくないのだろう。

交雑の危険性をPRしているが、保護対象種の生息域が限定的なのでそこに持ち込ませなければいいだけだと思うのは私だけではあるまい。

■外国産マルバネクワガタ属の「特定外来生物」指定のPRポスター(環境省)

むしろ、問題なのはこちらだろう。2008年の記事であるが、既に現実のものとなっている「本土系在来種との交雑」。社会的・歴史的な背景を含め、筆者の五箇博士の見解には共感するところが多い。一方で、規制することによる飼育放棄等の反動を考慮し、踏み切れない部分があるというのも理解できる。地道な啓蒙活動を続けるしか対策はないのだろう。

■クワガタムシ好きの日本人がクワガタムシを滅ぼす(五箇公一博士)

特定外来生物を決定する側にも問題はある

特定外来生物指定の多くは研究者を中心とした専門家の意見によるものだが、専門外の視野が思いの外狭いと感じさせられることがある。さらに研究者の世界では既存説に否定的な見解も叩かれる傾向にあるようだ。「生物多様性」を謳うのであれば、専門性はもとより幅広い関連知識が必要なはず。是非とも多面的な検討をお願いしたい。

また、カメ好きのある友人によれば、地元千葉の印旛沼周辺で問題になっているワニガメ・カミツキガメ等については「特定メディアの話題作り」や「自治体と研究者・研究機関の保身的活動」の側面もあるとか・・・まあ、やるべきことをやっているのだから数値的な結果をPRするのは当然ではあるが、他の特定外来種駆除とのバランスを考えると「カメだけかい?」とも思える。うーむ、微妙・・・。

一方で「捕獲された大型ワニガメ」を私財も投じて大型施設を作り多数保護されている方もいる。マニア・愛好家が悪のイメージを持たれる中、尊敬すべき愛好家である。並大抵ではできない。

■特定外来生物・特定動物 飼育保護許可施設 NPO法人 ワニガメ生態研究所
■同施設のブログ

最後に

私は日本の固有種を保護する、ということについて全く異論はない。というか、もっと積極的な動きがあってもいいと思っている。現在の飼育種を国産系に絞っているのも「国産種」のことをもっと知りたいと思うからだ。

他方で、外国種を比較的自由に飼育できる現在の環境は素晴らしいと思う。私が幼少の頃は生きたヘラクレスやオオヒラタを自分の手に取ることができる、それ以前に生きた個体を見ることができること自体が夢のようなことだった。そんな思いからヘラクレス・ヘラクレスとパワランは一度は飼育したいとも考えている。もう少し、現在の制度が続くといいが・・・。

今回の規制対象指定で昆虫業界・昆虫飼育のあり方が少し見直され、より良い方向に向かうことを願うばかりだ。特に根幹となる「放虫厳禁」の啓発のためには販売時における表記の義務付け等もやむを得ないだろう。安易に買える=安易に捨てるという構図はそう簡単にはなくならないと思う。

希少・絶滅危惧種等の保護の観点からも思うことはあるのだが、それは別の機会に。

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