先日の「外国産クワガタの一部を特定外来生物に」で触れた「希少・絶滅危惧種等の保護」の一つ。まずは「保護活動と愛好家の連携」について。
千葉県特産、絶滅危惧種シャープゲンゴロウモドキ
千葉県に「シャープゲンゴロウモドキ」という原始的というかちょっと変わったゲンゴロウの仲間がいる。絶滅したものと考えられていたが、1980年代に房総半島の山中で再発見された。関東圏では房総半島に生息が確認されているのみで、もちろん採集も原則として禁止されている。
私は1980年代半ばにバイクで房総半島を散策していたので現地を訪れたことがある。当時のままとは言わないが、ゲンゴロウ類が生息しやすそうな環境のいくつかは健在なようだ。
現地周辺では生息環境の保全と保護活動をされている方々もおられる一方、レア種を所望するコレクターも後を絶たない。先日も標本の売買で逮捕者が出たのをご記憶の方もいるだろう。
保護活動と愛好家の連携はできないのか
こういう問題が出る度思うのが「保護活動」と「愛好家(コレクターではない)」がもっと連携を取れないのか?ということだ。愛好家の中にはそういった「種の保存」のために取り組んでみたいと考えている人もいると思うのだ。
特に水生昆虫のような局所的に生息するものは1か所の生息地がダメージを受けるとその地での絶滅を意味することも少なくない。種の保存のためにはある程度の分散飼育も効果的と思うのだ。
※シャープゲンゴロウモドキは現地以外に鴨川シーワールド等での飼育は行われている。
具体的には自治体や保護団体が中心になって里親を募り、年間に限定数のペアによる繁殖活動を行ってもらう。もちろん許可証や個体管理をキチンと行い、定期的な交流を行うことが大前提だ。
数がある程度見込めるなら、保護地の拡大を行ったり、繁殖個体の条件付き販売を行ってもいいだろう。種の保存の保険的な役割を愛好家が担えばいい。
今は研究機関ですら愛好家の飼育記録を参考にしていることも多いのだから、総じて得られる情報は保全活動の役に立つはずだ。
懸案事項もある。生息する地域の自治体によっては保護活動に対する温度差がかなりあるようなのだ。このあたりは国や県レベルでも統一した見解なり方針を打ち出す必要がありそうだ。
希少種にとっては採集圧もさることながら、道路・宅地開発による生息地の破壊は壊滅的な打撃になる。全ての生息地を把握・保護することは難しい。
私の地元にも小型ゲンゴロウが数種類生息し、水生昆虫が多数みられるポイントがあった。2012年頃に道路の拡張工事でそのほとんどが姿を消した。
道路の拡張そのものもかなりのダメージだったが、ご丁寧にも迂回路・資材置き場が、道路からやや離れたメインとなる溜まりを埋め立てて仮設されたのが致命的になったと思う。
以降、生息していたマルガタ、ヒメ、マメ等のゲンゴロウ類の姿を見ることはなく、2015年にようやくコシマゲンゴロウの生息を確認したが、護岸された排水施設のためか数匹を見たぐらいだ。
※ハイイロゲンゴロウは水田内に健在。
実はこの時、工事が未着手の生息エリアに残存する小型ゲンゴロウ、特にマルガタを中心に100匹余りを採集・累代飼育した。工事後も僅かに残される生息可能エリアでの復活ができそうなら、その一助になればと考えたのだ。
マルガタゲンゴロウはミジンコ類を主食とする食性のため、継続的なエサの確保も容易ではない。何とか3年4代の累代を行ったが、現実にはハイイロとコシマゲンゴロウを確認できただけで、その地での種の保存が叶うことなかった。
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