ナガサキアゲハ(学名:Papilio memnon Linnaeus)は東南アジア、中国、台湾から日本にかけて広く分布する大型のアゲハチョウだ。もともと日本では九州や南西諸島を中心に分布していた種であるが、近年では関東、東北地方でも確認され、ツマグロヒョウモン等とともに温暖化の象徴とされている。
見慣れないアゲハの幼虫
幼少のころから柑橘系の樹を見ると、ついアゲハの幼虫を探してしまうのだが、2007年の夏、ウチの目の前のユズ?に見慣れない大型のアゲハの幼虫がついていた。
もちろん、ナミアゲハ、クロアゲハ他、このあたりに生息している主要種の識別ぐらいはできるが、どれとも違う。まあ、食草が柑橘類であることからも「ナガサキアゲハ」であろうことは想像できた。
終齢幼虫なのですぐに蛹・蝶になるだろうと思い、周囲の枝ごとお持ち帰り。ベランダで観察することにした。
調べてみると予想通り「ナガサキアゲハ」だった。夏型のナミアゲハやクロアゲハの大型幼虫よりもさらにデカく、厚めの葉もバリバリ音を立てて食っている。
早速、蛹化
2日後には行方不明になった。おそらく蛹化のための場所探しに入ったのだろう。翌日、壁を見上げるとやはり前蛹になっていた。
その翌日にはもう蛹だ。蛹の形状からも「ナガサキアゲハ」であることがわかる。
およそ10日で羽化
蛹になって10日あまり経ったころ、朝、ベランダの壁を見ると、大型の黒い蝶がいた。このナガサキアゲハはオスだった。成虫も大柄だ。
黒とはいってもクロアゲハ等とは異なり、少し青がかったメタリック調の美しい翅。モノトーンのアゲハチョウは他にあまり例がないので新鮮だ。
写真を撮ってから数時間後には飛び立っていった。
周辺のナガサキアゲハの行動
表のユズにはまだ多くの幼虫がいたようだ。数匹が立て続けに羽化していた。
羽化して間もないメスに交尾するオス、もう9月だが産卵に来ているメスもいる。
既存種のアゲハチョウの多くが新芽を中心に産卵するのに対し、ナガサキアゲハは成熟した葉にもどんどん産卵するようだ。さらに孵化した初令幼虫はその厚みのある堅い葉を難なく食べまくっていて、確かに既存種を脅かすバイタリティを感じさせる。
本当に生息分布を自力拡大させたのか?
温暖化の象徴とされる「ナガサキアゲハ」。その生息域の北上スピードは尋常ではないと思えるが、本当に生息地を自力で拡大させたのか?
話はそう単純ではないだろう。私レベルでも思いつくこととして、以下のようなものがある。
- 確かに国内の気温の上昇は重要な要因
- 既存種を圧倒するパワフルな生態
- 強力な台風による影響
- ミカン等の栽培の北上に伴う、苗木等での卵・幼虫の人為的移入
これらが複合的に作用して、関東・東北地方でも繁殖・生息が可能になったのではないだろうか。特に最後の「人為的移入」は大きい。パンジーを食草にできる「ツマグロヒョウモン」も似たようなことが言えると思うのだ。
私はクマゼミの生息域の北上も気になっているが、蝶よりも風の影響がなさそうで人為的な介入の可能性が低い分、北上スピードはゆっくりなような気がしている。
撮影日:2007年8月19日-9月3日
機材:Nikon D200 + AF-S DX VR Zoom-Nikkor 18-200mm f/3.5-5.6G IF-ED
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撮影場所:千葉県船橋市
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